日本心理学会第64回大会ポスター発表予定

視覚的潜在記憶課題に触運動的プライムは有効か?
―視覚的イメージ効果の検討―

○森本 琢           菱谷 晋介
(北海道大学大学院 文学研究科)
key words: クロスモダルプライミング、触運動、視覚
 

【目的】

  視覚と触運動間にクロスモダルプライミングが生起するという研究が存在するが(Easton, Greene, & Srinivas, 1997; Reales & Ballesteros, 1999)、そうした移行を支える内部メカニズムに関して、詳細なことは分かっていない.
本研究ではそうした内部メカニズムを探るべく、学習時とテスト時の表象の類似度を、学習時のイメージ的符号化という心的操作を用いて段階的に変化させ、どの段階でクロスモダルプライミングが生起または増大するのかを調べる方法により、どのような表象が視覚と触運動間のクロスモダルプライミングに必要なのか、検討を行う.
森本・菱谷(1999)は、上記の手法を用いて先ず視覚的学習から触運動的潜在記憶課題への移行について検討を行い、視覚から触運動的課題へのクロスモダルプライミングは、視覚的学習時にテスト時と触感が一致するような触運動的イメージを行った場合に、初めて生起することを示した.このことはすなわち移行に形態的表象だけではなく、触感を含む材料的表象が関わっている事を示唆するものであった.
  本研究では、次のステップとして、触運動的学習から視覚的潜在記憶課題への移行に必要な表象に関して、検討を行う.
  実験では、被験者として、統制群、色不一致視覚的イメージ群(学習時に喚起させる視覚的イメージの色がテスト時と異なる)、色一致視覚的イメージ群(学習時に喚起させる視覚的イメージの色がテスト時と同じ)を設け、比較を行う.
また、学習時にイメージを投影させる画面として、白または黒画面(視覚的妨害無条件)と白黒ドット画面(視覚的妨害有条件)を設け、そのような環境で学習した刺激と非学習刺激を比較することによって、各イメージが視覚的妨害にどのような影響を受けるのかも検討を行う.
 
 

【方法】

被験者 大学生54名(男44名 女10名)
実験計画 実験は3(群:統制、色不一致視覚的イメージ、色一致視覚的イメージ)×3(項目の種類:妨害無し、妨害有り、非学習)の2要因混合計画で行われ、後者の要因が被験者内要因であった.
刺激材料  Eastonら(1997)が用いた30個の3線からなる図形(水平線、垂直線、斜線から構成される)から、予備調査により難易度の高い刺激を除外し、24刺激を選択した後、さらに改良を加え、視覚刺激、触覚刺激を作成した(Fig.1).

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実験手続き 学習時(触運動的提示)において、全ての群は、モニターに映し出される妨害無し画面または妨害有り画面(ドット画面)を見ながら、触刺激を15秒間触ることが求められた.その中で、統制群はただ刺激を触るように、視覚的イメージ群(色一致群、色不一致群共に)では刺激を触りながら、妨害無し画面または妨害有り画面上に刺激の形態を視覚的にイメージし投影することが求められた.
学習後、5分間のフィラー課題を挟み、視覚的同定テストが行われた.
 テスト時には視覚刺激が0.033秒間(被験者15名による予備実験においてこの提示時間での非学習項目の同定率は46%)、色不一致視覚的イメージ群では学習時にイメージした色と異なる色で(白→黒、黒→白)、また色一致視覚的イメージ群では同じ色で(白→白、黒→黒)で提示された.被験者はそれを見て、図形を正確に紙に描くことが求められた.採点はMusen & Treisman(1990)の採点基準に従い、正解か不正解の1、0で行われた.
 
 

【結果と考察】

 視覚的課題における各条件の正答率に対して、群と項目に関する2要因分散分析を行った(Fig.2).群に有意な主効果は見られなかったが(F(2,51)=0.419)、項目に有意な主効果が見られた(F(2,102)=5.003, p<.01).また、群と項目の交互作用に有意な効果は見られなかった(F(4,102)=1.326).
 項目の主効果に関して、Ryan法による下位検定を行った結果、妨害無項目(t(102)=2.739, p<.01)と妨害有項目(t(102)=2.739, p<.01)が、非学習項目よりも正答率が高い、つまり、学習項目(妨害無項目、妨害有項目)にクロスモダルプライミングが生起した.
 本研究では、学習時に触刺激を触りながらイメージを喚起するかどうか、また、そのイメージがテスト時の刺激と材料的要素(色)が類似したものであるかどうか、に関わらず触運動から視覚へのクロスモダルプライミングが生起することが示された.一方、森本・菱谷(1999)では、視覚から触運動へのクロスモダルプライミングは、視覚的学習時に触感を伴う触運動的イメージを喚起するという限定した条件においてのみ、生起した.こうした2つの知見は、視覚から触運動と、触運動から視覚への移行の起こりやすさ、また、その符号化方略を含めた処理プロセスに違いがある可能性を示唆するものかもしれない.今後、こうした移行の方向性を包含した内部メカニズムを、詳細に探っていく必要があるだろう.

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引用文献 森本・菱谷 (1999) 触運動的潜在記憶課題に視覚的プライムは有効か? ―視覚的、触運動的イメージ効果の検討― 日本基礎心理学会第18回大会発表
本研究は、一部、科学研究費(萌芽的研究12871011)の補助を受けた.

(MORIMOTO Taku, HISHITANI Shinsuke)