北海道心理学会第45回大会口頭発表  要旨
 

表象構造の類似度の違いがプライミングに及ぼす効果
-新しい絵画的潜在記憶課題を用いて-

○森本 琢          菱谷 晋介
(北海道大学大学院 文学研究科) (北海道大学 文学部)
 
 

【目 的】

 先行研究において、知覚的な潜在記憶課題は知覚的形態に影響を受けやすく、音韻単語から視覚的単語、単語から絵画へといった交差プライミングは見られない、またはわずかにしか見られないとされてきた。しかしながら、表象構造をイメージによって類似させることによって、異なる形態にもプライミングが生起するという研究が存在する(Jacoby & Witherspoon, 1982; McDermott & Roediger, 1994; Roediger & Blaxton, 1987; Weldon & Roedeger, 1987)。しかし、その結果は混在しており、また、言語的な課題を用いた研究がいくつかなされているのに対して、絵画的でしかも瞬間的な同定を要するような課題用いた研究はわずかしかない。そこで本研究では、新しく作成した絵画的潜在記憶課題(重ね絵図形課題)によって、イメージという心的操作が、異なる表象(言語的・絵画的)を結びつける効果について検討を行う。本実験では、次の2点を目的とした。
(1)まず、新規の重ね絵図形課題にプライミング効果が生起するのかを確かめる。
(2)同課題において、異なる表象間(単語・絵画)において交差プライミングが見られるか、また、単語の指示対象をイメージすることによって、表象間の交差プライミングに促進が見られるか、を検討する。
 1つめの目的の検討するため、重ね絵図形を構成する3枚の絵の中に学習項目が何枚含まれるかを操作し、そうした操作が重ね絵図形の見え方(明確度)に効果を及ぼすのか調査した。また、重ね絵図形の構成絵の中で、学習項目の方が非学習項目よりも同定されやすくなるのかどうかも検討した。
 2つめの目的が本実験の主要なテーマであり、これを検討するため、学習時の刺激の提示方法として単語提示・単語提示イメージ・絵画提示の3つを設定し、その比較を行った。
 
 

【方法】

被験者 筑波大学生36名(男16人女20人)
実験計画 実験は、3(学習時の材料提示方法:単語提示、単語提示イメージ、絵画提示)×4[テスト材料の性質(重ね絵に含まれる学習項目の数):0個条件・1個条件・2個条件・3個条件]の2要因混合計画で行われた。学習時の材料提示方法は被験者間要因、テスト材料の性質は被験者内要因であった。
刺激材料 西本・林(1995)によって標準化された絵画刺激をもとに作成された(Fig1)。
実験手続き 学習時において、単語提示群は単語を見るように、単語提示イメージ群は単語の具体像をイメージしながら見るよう、絵画提示群は絵を見るよう教示された。その後、刺激が3000msずつランダムに提示されていった。学習終了後、インターバルを設け、テストが行われた。テストでは重ね絵図形刺激が、50msでランダムに提示されていった。それぞれの刺激に関して、図形がどれだけよく見えたかの明確度評定(5段階尺度)と、構成絵の同定が求められた。

       

【結果と考察】

(1)重ね絵図形課題におけるプライミング効果

 明確度評定において、テスト材料の性質によるプライミング効果が生起し[F(3,99)=3.92 p<.05]、0個条件・3個条件間のみに、有意な差が見られた(Fig2)。
 また、明確度評定と一緒に行った構成絵の同定においても、学習材料の性質によるプライミング効果が生起し[F(3,99)=4.16 p<.01](Fig3)、0個・2個、0個・3個に、有意な差が見られた。
同指標において、学習経験のある構成絵(学習刺激)の同定率と、学習経験の無い構成絵(非学習刺激)の同定率を比較したところ、学習刺激の方が非学習刺激よりも同定率が高かった (F[1,33]=35.51 p<.01)(Fig4)。
このように、重ね絵図形課題において、2つの尺度(明確度、構成絵の同定率)でプライミング効果が生起する事が示された。

(2)交差プライミングに与えるイメージの促進効果

 明確度評定尺度と構成絵の同定の学習個数の分析おいて、刺激提示方法に交互作用も含めて有意な効果は得られなかった。しかしながら、同定における学習刺激と非学習刺激の比較において、絵画提示が単語提示・単語提示イメージよりも高いプライミング効果を示し、単語提示イメージにおいて有意傾向で交差プライミングが生起した(F[1,33]=3.86 p<.10) 。このことから、学習時の刺激とテスト時の刺激の物理的特徴が類似した場合により大きなプライミング効果が生起しつつも、単語の指示する絵をイメージするという表象的作業によってプライミングが生起する可能性が示された。